個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「あいしてた」の「て」
2007年03月02日 (金) | 編集 |
***
 時計の音が闇に響く。
 寝ぼけた頭で、ああ、やはり夜は秒針が止まるあの電波時計を買っておけば良かったと、密月は思う。もう少し、いくらかの値段を足して、いいものを買っておけば、こんな風に悩まされなくて済んだのに。
 思いながらも、秒針程度が止まったところで、この重苦しい思考は楽になりはしない、とも思う。

 針を確かめると、2時を少し回った辺り。

 これからどのくらいの月日を、ここで、八十神で過ごすのだろう。

 シーツの上を、指でなぞる。
 外気に触れたそれは冷たく、手のひらは空を切る。そこに触れる熱は、何も無い。

 ――寂しい。

 例えようもなく寂しいのは、今まで人の中にあったからだ、と、密月は思う。
 新潟の、あの、故郷で。
 母と父と、妹と。そして自分と。

 出来るだけ、邪魔にならないようになどと、そんなことを考えながらも、しかし、そばに居る家族に、安らぎを感じていたからに他ならないのだ。
 だから、――だから寂しい。

 あったものが、無くなってしまったから、寂しい。

 手放したのは自分なのに。

 きゅ、っと、手を握る。
 そこに繋がる、何かを思い出す。
 母の手。妹の手。父の、手。

 金の髪。
 碧の眼。
 自分は“異質なもの”であったはずなのに、彼らの手は優しかった。撫でる手、繋ぐ手。繋げば何もかも忘れられた。
 自分の背負った業も、前世という名の枷も。

 ただ、“今”に。
 暖かく浸っていられたのに。

 ――時計の音が、闇に響く。

 それは、確かに。

 “今”を刻む、心臓の鼓音。
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