個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「あいしてた」の「た」
2007年03月02日 (金) | 編集 |
***
 どうやら居眠りをしていたらしい。
 響く号令の鐘に、はっと目を覚まして、腕密月は眠りに気付く。
 あったものは、無くして初めて気付くものだ。

 三々五々帰途に着く学生達の波に、逆らわず、しかし合流もせずに、密月は校庭を眺める。見慣れた、見慣れない、夕暮れ時。

 中学までを過ごした『外』と違って、八十神は例外なく輪契者が集う場所だ。グランドを走る、見知らぬジャージ姿の人物が、前世で隣り合わせた誰かかもしれない。
 会話を交わせば、いつ何処で、何があったか――運命を共有していたかどうか、分かるかもしれない。

 そんな、たわいも無いことを考える。

 辛い過去を。
 今も消せない“囁き”を。

 持っているのは、自分だけではない。

 さよならと声を交わすクラスメイトも。
 連絡事項を告げ、教室を去った教師も。これから出逢う数々の人、商店街の店先でレジを打つアルバイトから、図書館の司書、すれ違うバイクの、その運転手まで。

 誰もが、誰もが――思い出したくもない過去を。

 そう考えて、とっさに否定する。
 今自分は、後ろを向いた。

 辛さは、他人が勝手に設定するものではない。たとえ、苦しみしかない過去でも、それが「辛さ」であるかどうかは、その人が決めることだ。
 他人であるところの自分では、決して、無い。

 他者を不幸だと、辛いのだと決め付けることは。
 自分をも、“そう”してしまうことだと、密月は思う。思って、苦笑する。

 たとえ。

 たとえ、美しい「思い出」にならなくても。

 自分の過ごしてきた日々が、いつか誇りに思えるように。誰かを優しく癒すように。
 そう、願って。

 密月は、歩を進めた。
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