個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「嫉妬」密月&桐原先生
2007年03月02日 (金) | 編集 |
No.P×OXX11 担当:Sie
「色彩のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■プラリアを読む
※注意キーワード【そこはかとなく】【嫉妬?】
――――――――
 柔らかな色合いを、闇に見つけた。

 宵闇館にも朝は来る。
 季節が巡り、日が落ちまた暮れることを、あたりまえのように繰り返し、そこに存在している。
 行き来するまばらな人影を見送りながら、桐原灰人がふと、窓の外に視線を送ると、そこにぽつりと、コーヒーの中にミルクを入れたときのように、それが波紋として広がる前のように。
 ぽつりと、白い人影が立っていた。

(……あれは)

 見覚えがある。たしか先日、館を訪れたばかりの、雨宮の客。
 白く見えた印象はなんだったのだろう、と思うほどに、ごくごく普通に、清潔に、八十神の制服を身に纏っていた。金髪の少年。
 雨上がりの、洗い立ての空の下に、何故か傘を携えている。

「どうした?」

 窓を開け放ち、尋ねる。
 2階の窓に視線を送っていた少年は、驚いたように灰人を見たあと、条件反射のように頭を下げる。

「すみません、朝早くに」

 困ったように、しかし駆け寄りながら、少年は答えた。
 少年の声は穏やかで、のんびりとした京訛りが混じっている。標準語の形をとってはいたが、「すんまへん」という音だ。関西の出身なのだろうか。どうでもいい事に思いをはせていると、少年が続けた。

「傘を、取り違えてもうて」
「傘?」
「はい。昨夜は……」

 言いかけて、彼は碧の目を見開く。一瞬。
 瞬いて、そして伏せる。

「雨が、降っていたので」

 小声で告げられ、咥えていた煙草をもみ消し、小さく頷く。
 躊躇う理由を、しぐさを、見なかったふりをして。

「探してやろうか? 取り違えたってことは、自分の傘は忘れて行ったんだろう?」
「ええ」
 これも、「へえ」というイントネーション。
「けど、構いません。私はこれから授業ですし、その、……次に」
「ああ、次来るまでに探しておこう。夜には来るのか?」
「いえ」
 少年は、苦笑して答える。
「次が、何時になるかは分かりません」

 頭に浮かんだ答えを、口には出さずに。それほど時間をあけずに、また会うのだろうと思いながら、灰人は頷く。窓越しに、おとなしい色の傘を受け取る。何処にでもありそうで、取り違えたのにも頷けた。
「まぁ、いつでもいい。声をかけてくれ」

「おおきに。
 ――有難うございます」

「気にするな」
 マイルドセブンの箱を、くたびれた上着のポケットから取り出しながら、笑顔を視界の端に収める。どこか大人びた少年は、笑うと年相応の、邪気の無い顔になった。
「気をつけて」
 小さく笑って、見上げる灰人に、声がかかる。

「先生」
「ん?」
「センセイは、ここ、長いんですか?」

「――そう、だな」

 思いを馳せて、小首をかしげたのを、言いよどんだと受け取ったのか、「いえ」と、少年がとっさにさえぎる。「なんとなく」と。たいした事ではないのに。灰人が笑って答える。

「もう5年になるかな。雨宮に誘われた」

「――そう、どすか」

 一瞬。
 不器用に、しかし綺麗につくろわれた言葉ではなく。何かを表に出して、少年は微笑む。形だけで。
 寂しげに――それ以上に複雑なかたちで。

 気になるのか、と問うことは、僅かの間には切り出せずに、時計が丁度の時間を指す。

「と、済みません。そろそろ行きますね。傘、お願いします。急ぎませんから――」

 今度は“本当に”笑って。
 きびすを返して、少年は駆けていく。
“ここ”ではない何処かへ。

 見送りながら、灰人は新しい煙草に火をつけた。
 なるべく早く、見つけてやろうと思いながら。

 煙が昇っていく。曖昧で、――柔らかな色彩が、そこに解けた。

――――――――
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