個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「交わる糸」密月&ジョウさん
2007年03月02日 (金) | 編集 |
第0回プライベートリアクション
No.P×OXXO4 担当:Sie
「交わる糸のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■プラリアを読む
――――――――
 ――関係ないと括れれば、酷く楽だったのに。

 昼時を少し過ぎた学食は、酷く間延びした空間だ。
 殆どの生徒、または教師は昼食を終え、それぞれの作業に、若しくは会話に没頭している。
 腕密月(かいな・みつづき)が自分の昼食を終え、それでも学食を覗いたのは、それなりに理由があった。

 購買の、狭いとも広いとも言えない間口を見る。 
 そこには、くたびれた菓子パンがひとつ。

(……残ってただけでも良しとしよか)

 餡が入っているらしいその茶色い球体には、ぽつんと桜色のアクセントが乗っていて、それなりに可愛かった。
 小さながまぐちをだし、小銭を確認する。

「すみませ「おばちゃぁぁあああああああん、パン、パン残ってるッ?!」……」

 と、嵐。

 ん。
 の、形で止まった口を閉じる事も忘れて『それ』を見る。
 水色を基調に、鮮やかな青のライン。
 特狼の制服だ。
 スカートの下にスパッツ。
 短く跳ねるウルフカット。
 男の子のような、と、形容すれば至極簡単なのだが、元気が良いとか、女の子の域を超えているとか、それだけでは済まされない、鋭利な力を持った瞳。
 スレンダーで均衡の取れた体つきは、確かにヴィクトールのアーキタイプなのだろう。
 そう思わせる強さとしなやかさがあった。

 息を切らして駆けてきた少女を、どこかで見た、いや、聞いただろうか。
 特狼に所属する、酷く元気の良い少女――

 記憶の糸をたどる密月には見向きもせず、彼女は前後左右あらゆるポケットをばしばしと確認していく。これもまた、大慌てで。
 止まったままの密月の手から売店職員が小銭を受け取り菓子パンを渡すのと、彼女が――ありとあらゆるポケットの中に、世界で通用する共通の力、すなわちマネーが無いことを悟るのと、ほとんど同時だった。
 おばちゃんは冷静に事実を伝える。

「ごめんよ、売り切れ」

「……くっ。弁当さえ、弁当さえ忘れなきゃー……!」

 少女は心底悔しそうである。
 弁当を忘れた事、学食の販売時間に間に合わなかった事、そして更には財布を忘れたらしい事、どれに対して怒りを燃やしているにせよ、悔しい事だけは確かだと、確信を持って言える。

 触らぬ神に、祟りなし。

「あの」

 だが、密月は声を出した。

 明るい茶の髪が健康的な少女に比べ、猫のような金の髪が大人しげな密月は、ある意味対照的である。
 絵としては、非常に珍しい取り合わせと言えた。

「良かったら、どうぞ」

 間。

 差し出された、それなりに可愛いアンパン。
 一瞬の躊躇は、しかし長く続かない。

「い、いらねーよ、腹減ってるって訳じゃねぇし!」
 ぐー。
「……」
 じー。
「何ンだよ、自分で買ったンだから自分で喰え! 人の食い扶持横からぶんどる程落ちぶれちゃいねぇよ」
 つん。
 ふいと顔だけを横に向け、腕を組んでふんぞり返る少女に、また声が掛かる。
「特狼の、ひと?」
「だったら何ンだ。文句でもあるのか?」
 少女は『普通に』振り返るのだが、身長差のせいで、下からにらんでいるような格好になる。
「いえ」
 それを受け止めて、緑の目が瞬いた。

「……ヴィクトール」
 密月の口調はとても優しい。柔らかすぎて、少女にはすこし居心地が悪いようだ。怪訝そうに眉をよせ、しかしそちらに――自分よりわずかに年上の少年に、しかし対等以上の態度で向き直る。

 ヴィクトール。
 超古代文明時代、剣狼族末期の王。
 その名は特別なもの。

「王の中の王だ」

 密月の表情は、よく読み取れない。

 言葉の意味を計りかねてか、少女が尋ねる。
「……アンタ特狼の生徒じゃないだろ? でも、……ヴィクトール……なのか?」

 解けない謎を突きつけられた、というような不満げな問いに「いいえ」と答えて、密月は自分の紋章を見せる。ごくごくアッサリと。

「!」
「ね、違うんです」

「何で俺に見せるんだ?」
 不意を突かれたのか、心底驚いた様子で、少女が再び問う。
 位置が様々なため――以上の様々な理由で、紋章を人目に触れさせるのを嫌う輪楔者も多い。体のどこかに現れ、アーキタイプごとに異なるそれは、輪楔者とアーキタイプを識別できる、確実な手段だ。

「貴女なら」
 ここで密月は、くっと口角を上げた。
 それは多分、微笑で。
「アーキタイプで人を差別したりしないでしょ」

 あっけにとられる少女の手に、ぽんとアンパンを置く。

「これ、自分のために買ったんじゃないんです。人にあげようと思って。だから、貴女が貰ってくれても問題は無いし、むしろ嬉しい」

 歩き出す密月は、じゃ、と、ぷらぷら手を振る。

「へんなやつっ!」

 思ったままを口にしました、といった感想に、やはり密月は笑った。
「早く食べた方がいいですよ、午後の授業が始まってしまう」

「言われなくても喰うよっ。
 ――貰っとくッ……、ぅ、うう」

 サンキュ。

 小さく強く搾り出された少女の声は。
 どうやら少年に届いたようで。
 手を振る向こうにある顔は、きっと笑っているのだと思われた。

 そんな、昼下がり、交わった糸。
――――――――

□PLより:
 これもゲーム開始前のプラリアですね。
 snさんちの犬王ジョウさんをお借りしました。
 女の子PCをエントリーするなら、こんな元気な子がいいと夢想したそのままの――それ以上に素敵なお嬢さんで、眩しく思ったことがつい昨日のようです。
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