個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 あまねとチサト君(2)
2007年03月03日 (土) | 編集 |
No.P×OXX34 担当:Sie
「我が家のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の一部に送られています)

■プラリアを読む
――――――――
 ――ぼくたちはきっと、何かから叩きのめされてる――

「お帰り」
 東京OZ学園の、学生寮。玄関で陸上用のシューズを脱ぐ少年に、一番初めに届いたのは、バニラの甘い匂い。
 記憶を総動員して考えても、匂いの出所に心当たりが無い。食堂の方からだ。誰かがそこを使用し、甘い香りを漂わせたのだと、そう判断するのが正しい。
 正しい、と、思いながら。
 目の前の人物から同じ香りが、そう、甘い……ミルクと砂糖を焦がしたような匂いがしたのに気付いても、あまりのギャップに、視覚と嗅覚の情報をどうつなげて良いか分からない。あまりにも、そう。あまりにも不似合いな人物であったから。
「あまね、センパイ?」
 黒柳チサト(くろやなぎ・―)が尋ねる。何を尋ねたのか、分からぬままに。
 眼鏡の下、表情は相変わらず。目の前の男――穂積あまね(ほづみ・―)はいつもの通りだ。いつもの通り、そこには薄い微笑がくっついている。
「うん。今、帰り?」
「あ、ハイ。そうか、――ただいま、あまねセンパイ」
「おかえり」
 しゃがんだままの体勢だと、相手の長身が殊更際立つ。チサトだって低いほうではない。むしろ、年頃の少年としては上等に高かった、けれど。
(……でっかい、よなぁ……下駄箱小さく見えるし)
 いや、それが決して羨ましいわけではなく、むしろあんなに大きいとあちこちに頭をぶつけたり、しゃがむのが大変だったり、兎に角色々と面倒なはずで、羨ましがる必要はないのではないか?
 ぐるぐると考え始めたチサトの頭に――正しくはその上に載った帽子に、ポンと手のひらが置かれた。ぐりぐりと撫でた後、あまねは自分の靴を取る。大きな革靴。
「プリンが作ってあるから、みんなと食べて。冷蔵庫の、一番上に入ってる」
「……」
 そこで気付く。違和感の正体。
 あまねが持っているのは、洋菓子屋で持たされるようなケーキ・ボックスで。
「って、え?!」
「何?」
「今、作ったって、先輩が?!」
「うん。ケミカル――ええと、蒸したんじゃなくて、ゼラチンで固めた嘘プリンだけど、って言ったら分かるかな――まあ、さして美味しくも無いし、適当に固めただけだけど」
 良かったら、食べて。
 言ってあまねは、くっついたままの微笑を、きちんと、意図を持って、笑いの形にした。
 チサトは面食らったようにそれを見ている。
「あまねセンパイ、料理するんだ」
「料理って言えるレベルじゃないよ。意外そうだね」
「うん」
 はは、と、笑って。座って尚、チサトより高い位置から、その頭を撫でる。何となく子ども扱いされている気配に、チサトは少しだけそれを避けた。けれど、あまねは笑顔のまま、そんなチサトを見ている。
「君のそういう、素直な所は美徳だと思うよ。……高校に入るまで……だったかな、結構長いこと、親父と一緒に住んでいて――まあ、高校になってからも家族とは住んでたんだけど、どっちにしろ、食事は主にぼくの仕事だった。嫌いじゃなかったよ」
「……へぇ……」
 チサトは想像する。
 あまねの大きな手が、包丁を握る姿。ひょっとして、左手の怪我はその過程でついたのだろうか? いや、そう考えると、嫌いじゃなかったっていうのはおかしくないか?
 再びぐるぐると考え始めた思考は、ふとしたことで振り出しに戻る。
「って。今なんかビトクとかって?!」
「君のイイトコって意味。あ、週末は帰らない。届けは出してあるけど――、」
 チサトのうろたえにも訴えにも、あまねは特に動じた様子は無い。
「また来週、ね?」
 言って、少し笑った。

 チサトは考える。
 この男が(しかも)手作りのプリンを持って、(おそらく)尋ねるであろう訪問先は、一体どんな場所で、どんな相手なのかと。
 チサトは思う。
 また軽くあしらわれた。
 丁寧にこちらを向いてくれる――自分の「何か」をひょいと拾い上げて、それを褒めてくれるのに、ぷいとまた、興味なさそうに――どこかを向いてしまう。

「逃げるのは」
 不意に、あまねが唇を開いた。
 チサトの目にも、あまねは今、真摯な目をしているように見えた。だから僅かに、不意を打たれたのだ。
「もう、止めにする」

 ――だからこんな歪な形をしている――

 すっと立ち上がった姿は、チサトの知る「あまねセンパイ」であったはずなのに、何故だか、見知らぬ人を見たような。そんな一瞬の戸惑いを――感じてかみ殺して、チサトは言う。

「……いってらっしゃい」

 分からない。
 自分自身のコトだって、明日のコトだって分からない。今日受けた授業内容だって思い出せない(それは少し、理由が違う事柄だったけれど)。
 だから、相手のことも分からないんだと、諦めるつもりはなかったけれど、今、自分が言うべきことは、彼がそうやって迎え入れてくれたように、彼を送り出すことかも知れない。
 そして彼は、この挨拶を、「そんなこと」と、跳ね除けたりはしない(と、思う)。

「うん」

 とん、と、靴のかかとを合わせて。

 ――けれど――
 ――けれ、ど。

 ぼくらはきっと、立ち向かえると。

「いってきます」

 あまねは、笑った。

――――――――

□PLより:
 チサトくんをお借りしました(えへへへへ)。

 これは、PC同士の問題を解決するための第一歩として書いたプラリアです。
 あまねと、異父弟(という設定のある)密月は、仲が良すぎて喧嘩してるんですけど。
 根本的に価値観が違うので、恐らく未来永劫、真に理解することは出来ない――少なくとも非常に難しいだろうと考えると、その、設定したのは私であるにも関わらず辛かったので。

 この後、プリンもって弟に会いに行くんですね、いい年こいて。
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