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 あまねと迅くんと赤毛のあの子
2007年03月03日 (土) | 編集 |
***
 月の明かりが、雲に隠れた。

「ねぇ、ジン」
 闇色の瞳をそっと伏せて、穂積あまねが口火を切る。
 夜明けも近い。
 桐原灰人の部屋からの帰り道。長い影がふたつ、黒々と伸びていた。
 この男が、存外多弁で在るという事を、ジンと呼ばれた少年――十河迅は確かに、高校に入って三年目の“少年”だったのだか――そう呼ぶには艶めいた、金の髪と蒼い目を持つ男が知ったのは、そう遠い過去では無い。
 実際、あまねは迅の前ではさほど口をきかなかった、のだが。その口調から、その話題がさりげなさを装って出された深淵だと、迅は気付く。
 そんな機微に気付く程に、彼等は近しかった。
「何だ?」
 軽く投げられた答えは、むしろあまねを気遣ったもので。
 知ってか知らずか、あまねは、ふ、と、溜息を吐く。
「こないだの……――のコ、覚えてる? ちょっと――の」
 迅の回答は素早い。
「ああ。ちらりと見ただけだが覚えてるぜ。楽しそうだったな」
「……出てた?」
 顔に。と、言外に問う。
「あのあまねが悲しそうに見えたなら、そいつはよほどの間抜けだろうよ」
「……そっか」
 二人で話しているのを見かけたという迅の、笑うとも無く言うその言葉に――あまねは軽く肩をすくめてみせる。
「ぼく、何か言ってた? 彼に関して。実は、良く覚えて無いんだ」
 迅が僅か、眉をひそめる。
「“記憶喪失”か?」
「……どうかな……」
 あまねは、表情を変えずに答えた。
「忘却と喪失の違いは、自分じゃ分からない。だから“囁き”なんだ」
「……そうだな」
 不承不承頷いた迅が、言葉を続ける。
「あんまりあまねが楽しそうだったんで、狙って居るのかと思ってた。けど、そういう訳でも無さそうだったんで――ふと気になって、獲物じゃないのかと、俺が尋ねた。それだけだ」
「……」
「“今はまだね”って、楽しそうに笑ってたぜ、あまね」
「……そう」
 あまねの表情は動かない。
「ぼくが言いそうな事だ」
 迅の視線が、あまねをそっと撫でる。
 あまねが貝の様に口を閉ざしてしまえば、迅の追求は無い。だから沈黙が落ちた。
 たいしたことじゃない。
 そう口に乗せようとして、あまねはことごとく失敗していた。
「……ジン」
 吐き出すように。
「……独りにしてくれないか」
 あまねが口を開く。
 僅かな沈黙を破ったのは迅で。その声は低く――しかし何の色も纏わずに落ちた。
「……本当、に?」
 水面に輪が、広がるように。
 すうっと、何かが広がる。
 どちらも何も喋らない。肯定も、否定も、どちらの口からも発せられなかった。
「……すまない」
 あまねが、ぽつりと言う。
「……」
 その背中に、手足に、全身に。
 漂う気配を、迅は拒絶とは受け取らなかったし、事実、あまねは迅を拒まなかった。
 迅の前で。
 迅には、あまねは素直であるように、迅には感じられる。その判断規準に規格はない。ただ、本能がそう言う。
 このけだものは、ここで。自分の前では嘘をつかない、と。
 だから、自分の前で全身の力を抜きうなだれる――黒い獣に何があったのか、それは分からなかったけれど。

 いつもは二手に分かれる岐路に立つ。
 迅が、何も言わずに、あまねの帰途にそっと足を向けた。
 あまねも何も言わない。同じ方向に、ふたつの影が伸びる。

 雲に隠れた月が、再び照る。じきにそれは、日の光に隠れるだろう。

 けれど、そこに。
 見えない光は、灯り続ける。
***

□PLより:
 青猫さんちから、ひっそりと息子さんをお借りしています。
 青猫さんち(ホリゾントの向こう側。)のプラリア――あまねと三吾くんのやりとりを見ていただくと、ちょっと解る、かな、と思うんですが、落ち込みそうだな、と、思ったので、ちょっとへこませて起きました。

 あまねは「殴っている」んでしょうかね。
 それとも、「すがり付いてる」んでしょうかね。

 両方でしょうかね。

 PLにもまだ、見えません。どっちにもとれるような気がしてきました。
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