FC2ブログ
個人的妄想倉庫×運命準備委員会
 スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


 独白-「恋ではない」
2007年03月03日 (土) | 編集 |
***
 指先からこぼれる
 何か得体の知れないものがあって
 ぼくの心をからめとっていく

 これは一体何なのだろう。
 きゅ、と、心の片方に何かが絡まって、どこからか強く引っ張られたような、そんな気分に足を止める。
 皮膚が引き攣れる感覚。
 それと似て非なる感触。
 視線を彷徨わせた先には、常と変わらぬ、宵闇の館。
 60年という月日を経て尚、場所と心に留まり続けるこの建物には、ぼくの知らない様々の秘密があるという。

 エメレンツィアの復活。

 にわかに浮き足立つこの噂は、ただこの場所に入り浸り始めたぼくの耳にさえ届いた。アーキタイプとして知られた英雄の名としては、ウルリーカなどよりよほどメジャーな名だ。伝説の、超高級愛人。
 その愛技はいかなる性癖をも満足させたらしいが、彼女に気に入られた幸運な者しか、その快楽を味わえなかった、と、言う――一説には、両性具有であったという――『彼女』。
 興味がないと言えば嘘になるかも知れない。
 が、それは現実味を伴わない『伝説』だった。
 あの肌の上にある星の印。
 それが『彼女』を指し示すのだという『現実』すら、うすぼんやりとしていると言うのに。

 ――彼らの口の端に乗る、「エメレンツィア」という存在が『現実』だとして。

 例えば彼女が、誰かを気に入るとして。

 それに適う人間が居る、ということも、やはりぼんやりとして掴みどころがない。伝説の愛人。彼女が選ぶのがどんな人間なのか、それには――それには興味があった。
 彼女を愛する、若しくは崇拝する人間は数多く居るだろう。
 自分が、自らの前世に、どこかあこがれに似た感情を抱くように。
 少女の姿をした、自分の中にある彼女を、(それを一番に汚しているのは、他でもない自分自身であったけれど)――彼女の名誉は守りたいと思うように。

 ……彼は。

 夢崎邦夫は。

 恐らく。エメレンツィアを、愛して。敬愛して。崇拝すらしているのだろう。

 思って、自分が笑っていることに気付く。
 あの子に、例えば愛する人が、例えば運命を感じる相手が居るとして。
 それを単純に「好きな子」と言えるほど、彼らの立場が可愛らしいものだとは思わなかったけれど、ふと。
 彼らの年のころ、誰かを好きになってはしゃぐことを覚えたあの頃を。
 義務ではなく体を重ねることに喜びを感じたあの頃を思い出して、ふと。

 好きな子が居るなら。

 その子と幸せに。幸せになればいいじゃないかと、そんな事を。

 ――思った同じ心で――その愛を――奪い取ることを連想して。

 それは限りなく、ぼくの心を高揚させた。

 独占したいんじゃない。手に入れたいんじゃない。けれど、奪うことを考えてしまう、この思考回路は何だ。

 愛じゃない。恋でもない。愛おしいと思う気持ちですらないはずなのに、じわじわと、胸を覆ってゆく、曇天のような切なさは何だ。
 まるで真冬の空気に立ち向かうときの。

 あの、頬を切る冷たさに、指先を痺れさせる感覚に、ああ、冬が来たのだと実感する、あの時の。
 体が、間違いなく温かな熱を持ち、間違いなく、自分が生きているのだと感じる、あの時の。立ち向かう、高揚に似ていて――ぼくの心は沈みながら弾む。

 ……ああ。

 余計なことを思い出す。

 胸が、潰れそうだ。
***

□PLより:
 これを読んでくれたUさんが、「あまねくんが、恋に恋する乙女みたい(笑)」っておっしゃってくださったのが忘れられません(笑)。
スポンサーサイト

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。