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個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「螺旋」-巡りゆくもの
2007年03月03日 (土) | 編集 |
No.P×OXX30 担当:Sie
「螺旋のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■プラリアを読む
――――――――
 階段を一つずつ 降りた先に何か。

 長い前髪を後ろに撫で付ける。
 十分に乾かしたつもりだったけれど、それでも僅かな湿り気がそこにあって、黒い髪を余計に重くしている。
 穂積あまね(ほづみ・―)は、玄関ホール前で、わずかに立ち止まり、上を見上げた。
 ――エメレンツィアの油絵。
 宵闇館を象徴する、一枚の絵。
 美しさは性別の境界を越えてしまうのだと、一枚の四角形が指し示すように、この場所には、男性的な、若しくは中性的な――少女のような面差しの美しさすら混在していて。
 その、触れれば消えそうな幻影に、容易く手を伸ばせるこの場所を思う。

「対価は愛、か」

 ぽつりと。
 呟くあまねの背後に、人の気配があった。
 きゅ、と、床を拭く音がして振り返ると、見慣れた――館では初めて見る顔がそこにある。その姿に、一瞬だけ。
 一瞬だけ、あまねの表情は止まった。が、直ぐに微笑に取って代わる。

「……やあ。モップ似合うね、桐原先生」

 それは褒めているのか、と、言わんばかりに眉を寄せて。
 桐原灰人(きりはら・かいと)の眉間には、いつも、彼が抱える苦悩の、ほんの僅かな欠片が見え隠れしていたのだけれど。
「あんまり驚かないね」
「驚く理由が無い」
「そ」
 あまねは小さく微笑んで、灰人に向き直る。
「……ここで会うのは初めてだっけ。先生も指名出来るの? ……しないからそんな嫌そうな顔しないでよ。聞いてみただけだから」
「お前の冗談はよく分からん」
 灰人のため息。
 あまねの笑い声。
 玄関ホールはそれらを隠す手立てを持たない。
「桐原先生は真面目だからなぁ……」
「お前は少し不真面目が過ぎる」
 くつくつと、声を立てて笑うあまねに、悪戯を咎める声で灰人が言う。
「そうだ」
 玄関へと歩を進めようとしたあまねが、ふと立ち止まって。
「これ」
 左手を――包帯に包まれたそれを、灰人にかざす。
 その声はひどく低く真面目で、今までとはまるで違う響きを持っていた。

「……ごめん」

 灰人は、沈黙を落とす。
 落とすしかない、と、いった風情がそこにはある。
「桐原先生には、いつも感謝してる。それといっしょに、ごめんねって思ってる」
 あまねの声には。
 僅かな慈しみすらあったけれど、灰人の表情はひどく硬く――そこには、悲しみすら混在していた。
「ごめん」

「……謝られることはされていない」

 搾り出すように。
 灰人の眉間に刻まれた皺が深くなるのを、あまねは極力見ないようにしている、ようにも思えた。
「桐原先生なら、そう言うかな、って思ってたけど……変なことに巻き込んでごめんね。――いや」
 弱い力で、あまねは笑う。

「ありがと」

 あなたが居てくれてよかった。
 あまねの声は何も包み隠しはしなかったけれど、全ての真意を指し示すには、少し弱くて。消えそうな――螺旋の上の月みたいで。

「……感謝されるようなこともしていない」
 灰人の言葉に、はは、と、今度こそ笑って、あまねはきびすを返した。
「そう言うかな、って思ってた」

 階段を一つずつ 上った先に
 ――何か?
――――――――

□PLより:
 蛇足すると、「あまねが紋章を焼いたとき、居合わせてしまった桐原先生」の話が対になっています。

 対価は愛ですよ。
 愛。
 気付けはそこにあるもの、でいいんじゃないでしょうか。愛。
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