個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 密月と北斗くん。
2007年03月03日 (土) | 編集 |
***
 それは、誰にも。
 誰にも、分からない。

***
 あらゆる意味で――月見里北斗(やまなし・ほくと)は驚いた。
「すんまへん、突然」
 客だと聞いていた相手は、見知った――友人、とだけ呼ぶには少々入り組んだ距離に居る、北斗の先輩で。
「密月先輩」
 腕密月(かいな・―)は、困ったように微笑んで小さく会釈する。
 その微笑みは寂しそうで、けれど、北斗の顔を認めたとたん、柔らかく溶けて。だから北斗も、自然に声をかけることが出来たのだけれど。
「どうして……」
 言いかけて、淀む。
 どうして、ここへ、などと。訪ねていいのだろうか。
 ここは、宵闇館。
 そこで交わされる愛は、全て男性同士のもので――目の前の少年も、間違いなく男で。戸惑う北斗に、密月がそっと、小さな紙包みを出した。
「差し入れを持ってきたんです。そしたら、入り口で、その……」
 今度は密月が言いよどみ、「客」と間違われたのだ、と、言い添える。客、に、間違いは無かった。彼は間違いなく、北斗を訪ねてきた。だから、北斗の「客」である。
 だが、宵闇で行われるやりとりに於いての、「売り手」と「買い手」に分けた際の、「客」ではないのだ、と、北斗は悟る。

「有難う、御座います」
 少しの安堵と、少しの寂しさとを感じて、そのどちらも打ち消し、北斗は笑う。密月が微笑みを返すのを見て、北斗は告げた。
「良かったら、移動しませんか。お茶を淹れます。――その、ここ、ベッドしかないから」
 接客室を見渡して、二人が同時に苦笑する。
「おおきに。――かまへん、いや、構いません、か?」
「ええ」
 一瞬踏みとどまった密月に、一歩先に出た北斗が答える。
「密月先輩の言葉も、“そのまま”で構いませんよ」
 微笑んで、伝える。
「……耳に優しいですから」
 密月は、照れたように笑った。
「おおきに、月見里はん」

***
 密月の「差し入れ」は、品の良いチーズケーキだった。
 ごくごくシンプルにアルミホイルで包装され、クラフトの袋に入れられているのだが、小さく、本当に小さく、しかし可愛らしくラッピングされている。
「済みません。本当は俺がお詫びに行かなきゃいけないのに」
 北斗が、紅茶の香りを漂わせて言う。
 ふるふると、密月は首を横に振った。蜜色の髪が揺れる。
「気に、せえへんでええよ」
 ティーカップを受け取りながら、柔らかく微笑む。
「そう、言いに来たん。……あんな、もし、あの時、北斗はんが誰かを必要としていて」
 微笑みながら、密月は碧の瞳を閉じる。
「そして、うちがその役に立てたんなら――うちは、嬉しい。だから、北斗はんが気にすることはあらへんねん」
 見開いた密月の目と、北斗のそれがぶつかる。
「――」
 北斗は僅かに、視線を逸らした。
 密月の言葉は、痛いほど分かる。この人は、優しいのだ、とも。だから、自分を気遣って、わざわざこの場所まで尋ねてきてくれたのだ。
 それを、嬉しいと思うと同時に、素直には喜べないだけの事情が、北斗には、あった。微笑みに答えようとして、唇の端を上げる。
 眼鏡の、レンズの向こうへ。
 微笑を送ろうとして、それは少し悲しげになってしまう。
「お茶、良かったら」
 だから誤魔化した。
 綺麗に赤く染まった茶の色は、暖かな湯気と香りを二人に送る。
「うん、おおきに。……チーズ、平気?」
「はい。良かったら、半分こしましょう」
「あ、うちはかまへんのに」
 かちゃかちゃと、食器とフォークが並ぶ。北斗は器用にケーキを分け、その大きいほうを密月に寄越した。
「……おおきに」
 申し訳無さそうに、でも断らずに、そういう密月に、北斗の顔に笑みが浮かぶ。
「先輩がくれたのに」
「せやけど……せやから……ええと」
「ちゃんと頂きます」
「……うん」
 いただきます、と、密月が手を合わせるのにあわせて、北斗も両手をあわせる。
 それは、独りで食べる何よりも美味しかった。
***

□PLより:
 宵闇ブログのほうでは、もう少し先まで書いたのですが、ひとまず、「ここまでは完成!」というところまで乗せてみました。
 なので小話分類で。

 北斗くんと密月の関係は、いつかいつかと思いながら思い切れません……初回は「リアが着てから」って思っていたし、着たら着たで、雨宮先生とのアレコレがありつつ、北斗くんとも、ということが(私と密月では)出来なくて。うう。
 でも彼らは仲良しだといいな、と、PLは思っています。
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