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個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「偶然」密月と迅君
2007年03月03日 (土) | 編集 |
No.P×OXX32 担当:Sie
「偶然のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の一部に送られています)

■プラリアを読む
※【BL】【たぶんBL】【触れてるだけです】【たぶん】
――――――――
 宵闇館で。
 腕密月は、極力他の客に出逢うことを――そもそも、雨宮譲[あまみや・ゆずる]以外の人間と出会うことすら、極力避けてきた。
 だからその日、腕密月(かいな・みつづき)が、人の気配を感じて歩を止めたとしても、それに何の不思議も無い。

 常は、雨の夜。
 譲に会うためだけに、密月はここを訪れる。
 その日は、負った傷の手当を受けるため、ほんの少し、ほんの少しだけ訪れて。そのまま帰るつもり、だったのだ。
 前に出会ったのは、ここで最も出会いたくない人物、だった。その姿を、その名を思い出す。
 穂積あまね(ほづみ・―)。

「――っ」

 嫌い、なのではなかった。
 むしろ、蘇る想い出は暖かいものの方が多い。大切な家族で、兄で、幼馴染で。だからこそ、相手を理解できないのが――辛かった。
 長い手足。黒い影。
 何故彼は、彼自身を傷つけるようなことを好むのか――それは、密月には到底理解できないことだった。誰彼構わず手を出すことも。人の心を弄ぶことも。そのどれも、結局は、彼の心を満たせないのに。

 かつん、と、足音がしたのを、一瞬聞き逃したのは、そんなものを思い描いていたからで。
 角を曲がればエントランスホール。
 そこを通らねば帰れない。
 すぐ、そこにある気配。引き返すのは不自然だ。ともすれば跳ねそうになる胸を押さえて、気配に集中する。かつん。ゆっくりした歩幅。何かの香りが鼻先に触れた。
 覚えのあるそれが、煙草の香りだと、密月は気付かない。
 気付かなかったけれど、それは――密月に、ただひとりを思い出させた。
(……にい、さん)
 一歩。
 力を込めて、踏み出す。あと数歩。いつまでも、逃げては居られない。
 一歩、二歩。
「あ」
「……、っ?」
 力を込めすぎた。
 曲がり角で、密月は誰かとぶつかる。ばさっと、布地と体がぶつかる音がして――ああ、あまねだ、と、思ったのだ。
 手に返る弾力も。彼の周りに在る、香りとでも言うべきものも。布地を通じて感じるその体は、確かに、密月の知る男と酷似していた。そう、『似ていた』のだ、ということに、彼は後から気付くのだけれど。
「あ」
 まね、と、続くべき言葉は紡がれずに、吐息のように消えた。
 見上げた先。
 そこに居る人物に、吸い込まれるように視線を送った。
「……っ」
 似ている。
 そう、とてもよく『似ている』。
 謝罪の言葉より先に、疑問が頭を駆け巡ってしまっていた。何故。何故、自分は。『彼とあまねを間違えたのか』。
 輝くような金の髪。見覚えがあったような気もするが、直ぐには思い出せない。
 そこにある瞳は澄んだ蒼で、兄のような深い闇色ではない。筈なのに。
「俺の顔に、何かついてる?」
「あっ……」
 うろたえて、あからさまに狼狽してしまったことにもうろたえる。
「か、堪忍」
 つるりと出た謝罪の言葉は、西の言葉そのままで、かぁっと赤くなる頬を、密月は冷えた左手で辛うじて押さえた。似ている。何度見ても。けれど、間違いなく違う人物だ。色だけでも、外見だけでもなく、『違う』ことは、深く言葉を交わさなくても分かる。
 だからこそ、戸惑った。
 それほどまでに――会いたかった、とでも?
「その、すんまへん。ぼぉっと、し、てて」
 目を、合わせられない。
 今の自分は面白いくらい赤い顔をしているのではないかと、熱を持った頬で分かる。
 くすりと、笑う気配。

 ああ、そんな所まで――似ていなくてもいいのに。

「誰かと、――いや、誰と間違えたんだ?」
「いえ」
 とっさに答えて、良い淀む。視線を一巡させて、やはり所在投げに彷徨わせてしまう。これでは、『間違えました』と言っているようなものだ。
「……その」
 知らず、一歩後ろに下がる。
「知り、合いに――その、すんまへん」
 一歩。
 広がったはずの感覚は、相手が一歩進んだことで用意に縮まる距離だった。
「ふうん」
 動じる密月に対して、彼――学生服の青年は、酷く冷静だった。
「似てる? ――恋人に」
「ちがっ……、」

 名を。呼びかけて止まる。
 あまねは。
 あまねは、自分の何だったのだろう。
 兄だ。それは間違いない。けれど言えない。八十神では、それは『言わないでおく』、あまねとの約束だ。

「怪我、してるのか」
「え」
 手のひらの気配を感じて、密月は目を見開く。
 自分はどうかしていた。こんなに間近に相手が近づくまで、何故気付かなかった。壁が背中の真後ろまで来ていることに――いつの間にか後ずさっていたことに。
 ――何故、気が付かなかったのだろう。
 髪が、綿毛みたいに揺らされるのを視界に納めながら、密月は動けずにいた。まるで、射すくめられたように。どきりと心臓が跳ねる。体温。指先の、感触。
「手首。診せて見ろよ」
「あ」
 言われて見れば、頬に添えた左手から、白い包帯が僅かに覗いていた。とっさに隠そうとするが、間に合わない。
「――ヘルマンの記憶を持ってる。痛み、酷いのか」
 言われて、少しだけ力が抜ける。
「これは」
 密月は、そっと目を細める。傷は少しだけ痛んだけれど、そこに白い布を巻いたのは、密月の愛しい人だった。思い出すだけで、安らげるほどに。
「……大丈夫、です」
「ふうん」
 何かを察したような迅の声。その気配を、密月は見逃した。
「あなたが――、宵闇館には最近? ヘルマンの……」
 アーキタイプの生徒が入ってきたと聞いた。そのことを話そうとして――不意に、言葉が途切れる。視界が閉ざされたからだ。閉じたのではない、何かが近づいたのだ、と、気付いたときには、左手首は掴まれていた。
「痛っ」
 密月を見る、蒼い瞳。深い海のようで、高い空のようで。
「――お前……」
 掴まれた傷がひりつく。笑いの形に上がる口角が見えた。
「何、ん」
 肩に手が、と、思うより先に。触れた。唇が。白い布地に。つい、と、引っ張られて、それが緩む。
「――っ」
「ふうん」
「見な、」
 身をよじると痛む。触れられたくなかった。見られたくも――無い傷だった。相手と、自分の、欲望の残滓。見られたいはずが無い。
「“そういう傷”なんだ」
 くっと、喉の奥で起こる笑いが耳に届く。
 かっと熱くなる頬と、傷跡に這う舌先を、鈍る頭で密月は認識した。ばっと、出来うる限りの力で左手を引き寄せる。
「触るなっ……」
 跳ね除ける。拒絶。自分でも驚くほど強い口調で、密月は相手を跳ね除けた。
 やっぱり似ている、と。
 口の中で呟いたはずなのに、それは声に出ていて、密月を驚かせる。
「……誰に?」
 あまねに。
 そう、口には乗せずに、密月はもう一度拒絶の言葉を吐いた。
「あなたには関係ない」
 精一杯に言い放つ、けれど。
 きゅっと唇を結んで言う密月の、目元は少し怯えている風だった。
「手首」
 男が、ゆるやかな口調で言葉を紡ぐ。
「傷が出てる。痛むんだろう」
「……」
「俺に似てるっていう奴に、」
 手を取られ、今度は大人しくされるがままになる密月を、男は少しだけ微笑んでみた。からかわれているようで、密月は目を逸らす。
「……やられたの?」
「違う」
「じゃあ、惚れてるやつに?」
「そんなことせえへん」
 キッと睨まれて、彼はむしろ笑う。
「……何笑うてんねん」
「いや」
 笑いはくつくつと、堪えきれない風で。
「分かり易いのな、お前」
「な、……んっ」
 手を取られまいと、無防備になった場所が唇で塞がれる。頬に、鼻先に、――逃れた唇、に。
「そんなんじゃ、いつ喰われてもおかしくないぜ」
「……!」
 真っ赤になって、手の甲で唇を拭う密月を、彼は愉快そうに見ている。
 からかわれた。かわれた。からかわれた……。そんな事が頭を巡る。
「そんな顔するなよ」
 ――からかいたくなる。
 笑顔で告げられて、密月は黙り込む。
「傷、少しだけ治しといた」
「……」
「――名残惜しそうな顔だ」
「……っ」
「さっき」
「……」
「あまね、って呼んだ?」
 ふいとそらされる、若葉色の瞳。密月のそれは、長い睫に縁取られて、少し陰った。
 答えずに、彼の横を通り過ぎる。これ以上口を開けば、どんなことを口走るか分からない。密月はそう、判断した。否定することは嘘をつくことになる。それもしたくなかった。けれど。
「……」
 知らない。呼んでいない。たったそれだけの言葉が、出ない。
 それは、――知っている、と、言っているようなもので。落ちる沈黙を焦るのは自分ひとりだけだと、密月は思う。思って、身を硬くする。
 知らない。
「あんな人、知らへん」
「ふうん」
 ――しまった。
 そう思うが、既に遅い。『そんな人』とは言わなかった。『あんな人』と言ってしまった。それは、相手の人となりを知らなければ言えない言葉。
「……」
「嘘、下手だな」
 視線を逸らす。
「……、もう、いいでしょう。あなたには関係ない」

「十河? ――と、腕か?」

 そこにかかったのは、二人の見知った声で。
 ばつが悪そうに俯くのは密月ばかりで、そごう、と呼ばれた男は、至極平静だ。
「……桐原、センセイ」
 密月が、小さく頭を下げる。
「今日は、もう帰ります」
 薄く笑って、教師――桐原灰人(きりはら・かいと)に向き直った。
「……そうか。また来てやってくれ」
 その頭を、灰人がぽふん、と、柔らかく撫でる。僅かに緊張したままだった密月の表情が、柔らかく――本当に嬉しそうにほころぶのを、男子生徒――十河迅(そごう・じん)は、表情を変えぬまま、しかし興味深そうに見ていた。
「雨宮先生が喜ぶ」
 言われて、密月の顔が。今度は朱を刷いたように赤くなる。
 信号機みたいだ。
 一通りうろたえたあと。
「……おおきに」
 密月は、笑った。

***
 宵闇館。エントランスホールに、男たちの声が響く。ふたつ。
「何か、あったのか?」
「別に何も」

 宵闇館で――
――――――――

□PLより:
 迅くんと密月の共通点=あまね
 なんですが、迅くんとあまねの関係もちょっと特殊ですし、密とあまねの関係もまあ、特殊だね、っていうお話。あと、密月は嘘つけないね、って話(苦笑)。
 まだきょうだいが喧嘩してる真っ最中……の設定で書きました。

 でもそもそも、きょうだいの喧嘩は、一方的にあまねが密月を怒らせて、一方的に密月があまねを殴って、という関係で、あんまり兄弟げんからしくはありません。
 あの兄弟の、何故あまねが密月を(言葉と態度で)突き飛ばすのか、というあたりも、追々補完して行きたいです……

 最近やっと、アレコレ判明してきたので。はい。
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