個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 秘密の鋳型
2007年03月13日 (火) | 編集 |
第?回プライベートリアクション
No.P×OXX37 担当:Sie
「はじまりのように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■プラリアを読む

※注意キーワード:【前世】【夢オチ】【ですがオチてない】

――――――――
 水鏡のようだ。

 ぱしゃりと、何かが跳ねた。心の奥で。
 それは血の跳ねる音。心臓が生きていたあかし。

 ぼんやりとした霧の中に、ひとりの男が立っているのが見える。
 下肢に纏った装束は粗く、上半身には何も――いや、鋼のような、獣のような、しなやかな筋肉を纏っていて、彼の腕が、こぶしが、ただの飾りでないことを指し示していた。
 怒りを抱いた鷹の目は、虚空からゆっくりと引き剥がされ、こちらを向く。
 憎しみと憤怒と、そうして悲しみが、鋭い刃のように、胸に突き刺さる。

『何故だ』

 その男は問うた。
 答える言葉を、私は持たない。
 信じたのは貴方だ、と、喉の奥、胃の腑の辺りにどろりとした感情が湧き上がる。
 信じたのは、貴方だ。
 裏切られたのが貴方であるように。

『何故』

 その男は刺した。殴った。侵した。
 そのどれもしなかった。
 ただ、強い意志でもって、私を射ただけだ。何故、と。問いたいことはそれではないはずだ。

 何故裏切った? 何故殺した。何故死なねばならなかった。その数々の問い以上に、いや、問いに乗るたった一つの言葉は、それではないのだ。それではない。何故だなんて、そんな言葉ではない。聞きたいことは、そんなことではない。
 彼は私ではなく、私は彼でないのに関わらず、私は何時の間にか断定していた。

「何故」

 私は問い返す。

「裏切られたのは貴方だ。貴方は誰かにとって邪魔な存在だった。それは貴方が一番よく分かっているはずです。何故今更問うのです、私に。悲しいのは裏切られたことではないくせに」
 なぜ、なんて。

 ――あの昔。10万年前、などという、得体の知れない数字が指し示す過去――あの場所で、何があったのか。
 私にも全てがわかっている訳ではない。
 ただ、自分の魂の根源がそこに――『彼』にある、という、漠然とした確信があるだけだ。
 彼が私で、私が彼だとしたら、彼は無数に飛び散ったことになる。私は無数に飛び散った彼のかけらで、おそらく、非常に出来が悪い部分を寄せ集めて、ようやく今の形になったのだ。
 そうとしか思えなかった。
 彼のこぶしは、私には引き継がれなかったのだから。

 ぎゅっと引き絞られた弓のようだった彼の目から、ふと力が抜ける。

 何故彼が死んだのか。

 根源を同じくする人々の話をかき集めた情報によれば、彼は信頼していた女性によって毒殺されたのだという。その話を聞いたとき、私は納得したものだ。
 彼が求めた自由の代償。
 支配に抗うには力が要る。虐げられたもののためにふりかざされる拳は、はたして、支配するものだけを撃つことが出来ただろうか? 答えは、おそらく否だ。
 支配するものと支配されるものの戦いの中、死傷したのは、おそらく。

 支配されるもの、だけなのだろう。

 支配するものは、傷つくことすら恐れ、彼を消した。私はそう推測する。
 だから、彼を殺すのに、支配者の手ではなく、“彼が信頼していた女性”が使われたのだ。――彼女は、ただの道具に過ぎない。りんごの皮を剥くナイフのようなものだ。
 ああ。
 だが。
 知りたいのは。知りたいのは、――彼女のこと。

「忌まわしきラドルフ」

 私は彼の名を呼ぶ。
 魂の源が彼であることを指し示す、彼を象す紋章のついた舌で、彼の名を呼ぶ。

「問いたいのは私だ。彼女のことを――“あなた”を殺した女性のことを」
 教えてくれ、と、声を絞る。
 握りつぶした果実が、手を濡らしべとつかせるように。問いは私の心をべとつかせる。

「貴方は」
 彼女は――

 ――貴方を――俺を――
「彼女を」


「あいして――」


 ――いた、の?


 それを。
 それを、教えてほしい――

***
 急速に。
 急速に、視界が開けた。
 霧が晴れ、光が注ぐ。
 その展開が余りにも急で、腕の中に暖かな生き物が存在していることも、目に入ってきたのが朝の光だということも、何もかもが現実だということを自覚すると同時に、今まで見た、そして告げた言葉が夢だったのだと、スイッチを入れたラジオが正常に喋り出すまで、ぐるぐるとダイヤルをいじるように、雑音の中、はっきりと現実を受け容れるまでに。
 腕密月の(かいな・みつづき)の中で、それはもう様々のことがよぎったのだが、果たして。
 問題は解決を見ず、寝ぼけた頭で、小動物にしては大きい、“何か”を抱き寄せて、ひとつの結論に至る。

「……夢か」

 自慢にも何にもならないが、密月の寝起きはべらぼうに悪い。血圧が低いのか食べるものが悪いのか、性格が悪いのかは知らない(最後の項目が寝起きに関係するかどうかも知らない)が、起動時間が長いことは、彼の実家では数々の武勇伝を作るに至る危険水域だ。本人は知らないが。

 抱きしめた何かはとてもあたたかい。
 あたたかいものはとても落ち着く。
 頭をうずめると、心地よい柔らかさと、日向の猫のような、髪の匂い。ああ、そうか。誰か傍に――

 引き戻される。

 ――誰、が?

 海底に吐き出された溶岩のように。
 急速に冷やされた頭で、夕べを思い出す。
(――そか)
 月見里北斗(やまなし・ほくと)。宵闇館で会った、たしか1年生だ。お持ち帰り、したわけではないとはいえないが、テイクアウトを注文したわけではなく、夜中、外を――おそらく夢遊病で彷徨っていた彼を部屋に招き入れた。その経緯を思い出す。
(……そやった、か)
 寝ぼけた頭で、柴犬の。
 茶色い子犬を思い出す。
 北斗の髪は柔らかく、伏せられた睫も淡い、優しい色をしていた。肌の色が白いせいだろうか。優しい色彩は北斗によく似合う。無防備な寝顔は、まるで子犬のようだ。
 その柔らかな髪を、夜中に何度も撫でた。そのことを思い出して、深く息を吐く。途中で自分も眠ってしまったのだろう。
 先に目覚めたのが北斗でなくて善かったのか悪かったのか――まだぼんやりと霞がかった頭では判断できなかった。確か、ひざの上に載せていたような気がするのに、何時の間に抱きしめて寝たんだろう。
 と、言うか、近い。本当に近い。
 右手の指を動かすと、僅かにしびれた感触がする。腕の上には、北斗の頭が乗ったままだ。
 と、言う事は、たぶん。

 腕枕をしたまま寝たことになる。

(……そやっけ……?)

 記憶が無い。
 衣服の乱れも、無い、ように思うが、考えを巡らせるうちに、また眠くなってきてしまった。
(――アカン)
 そう思ったときには、もう、まぶたは降りていて。規則正しい寝息が、とても心地よくて。暖かくて。

 夢を思い出す。
 自分は何かを問うつもりだった。たしか。たしか。

「――ああ」
 たしか。
 愛している人を、守りたくて。
 守るどころか、奪われる側になって。
 それがとても不甲斐なくて。
 裏切られたことよりも、彼女が。彼女がただ、策略のためだけに自分に近づいたのか、それとも、そうではなかったのか。そこに、葛藤に成り得るだけの情があったのかどうか。

 ――あいされて――愛されていたのか――

 そんなことが、知りたくて。

「……情けないなぁ……」
 ひとりごちて、もういちど、ため息を吐く。ふと、腕の中から、誰かの声がした。
「……せん、ぱ、い?」
「うん」
 反射的に答え、頷く。
「……その、」
 戸惑う――怯えたような、狼狽する声が聞こえる。何を不安がっているのだろう?

 あたたかい。

 それだけで、こんなにも幸せな気持ちになれるのに。

 水鏡の様だ。
 ふと、密月はそんな事を思う。
 北斗の気持ちは、北斗にしかわからない。密月の気持ちが、密月にしかわからないように。
 けれど確かに、自分は寂しくて。だから勝手に、北斗も寂しいのだ、慰めなくては、暖めなくてはならない、ということにしている。独りで。
 自分の寂しさを。
 埋めるために――彼を――……?

 思考はどんどんぼやけていく。
 夕べ寝たのは何時だったのか。瞼の重さが、密月には支えきれない。

「ごめん、……堪忍」

 崩れるように。
 頬には柔らかな枕が当たって。ああ、冷たくて気持ちいい、と、思う。そこで、少しだけ自分の体温が高いことに気付くのだ。

「もう、少しだけ……」

 ぱしゃりと、何かが跳ねた。心の奥で。
 それは血の跳ねる音。心臓が生きていたあかし。

 はじまりの、おと。
――――――――

■PLより:
 こそりと、月見里北斗くんをお借りしました。
 初回のリアが来るか来ないかの頃、あれこれプラリアを書き始めた頃に書いたものなのですが、話の終わりがいつまでたっても見えなくて、ずるずる先延ばしに……あと、ファイル名をこれだけ日本語にしてしまい、おき場所を忘れて迷子にしていたのでした。
 ラドルフを書いたつもり、ですが、うーん。

 イメージ先行。
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