個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 京と都
2007年03月16日 (金) | 編集 |
第2回リレープライベートリアクション

No.P×OXXO3      担当:Sie

「その手を、離さない」

(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■リレープラリアを読む

―――――――――――――――――――――――

 ――私は、何かを手にとった。
 小さな万華鏡。
 金細工の施された筒の先に、金粉の入ったガラス管が取り付けられて居る。オイル式らしい。
 覗き込んだ先にあるきらきらと光る何かが漂っているのか、自分の体が何処かに漂っているのか、ふと分からなくなる。
 明るく輝く何かを、視線で追う。
 ちかりと、何かが光った。

「おかーさぁん」
 ”私”が泣いている。
 ふかふかした赤毛は、いつも鏡に映るそれと同じ。
 撫でた感触すら手に蘇る様だったが、肩まで伸びたそれは、かわいらしく結わえられていた。
「きょーちゃん、おかーさんは」
 泣く”私”を、私は撫でる。だいじょうぶ、とは言えない。言えないから、撫でる。
 私のきょうだい。
 右手には、血塗られた刃が握られていたので、開いた左手で。
 刃を握り、それを悟られぬ様に気遣いながら、私は言う。
「……おうた、うたって」
 辛うじて作った表情は、果たして微笑みに成りえたか。

 ――万華鏡を持つ手が、視界に写る。
 握る手に、感覚が移る。
 何時の間にはめたのか分からない、手袋の感触。
 これは夢だ、と思う。

「……あのおうた?」
 問われ、私は頷く。
 私は知っている。
 私たちの声を、好きだと、私たちが一緒に歌うと、大人とも子供とも、男とも女ともつかない、綺麗な歌声になると、言ってくれた母が、もう居ないこと。
 子供用にしては少し大きなベッドの中、ひとつの布団にくるまりながら、あの子が口を開く。
 か細い声。
 泣きそうだ。
 支える様に、私も歌う。
 生まれた国で、歌った歌。請われて舞台に立ったこともあった。当てられたライトが眩しくて、きゅっと握り合った手を、離せなくて。
「……てぃんさぐぬ、はなや……」

 ――万華鏡に浮かぶ金粉は、鳥の羽を思わせた。
 背中に、背もたれの感触。
 次いで、腰から太ももにかけて、椅子の硬さが伝わってくる。
 ああ、やはりこれは、夢なのだ。

 舞台の熱。
 歌いながら、観客席の中に必死に母を探す私たち。
 母が用意した愛らしい衣装の、女の子用をあの子が、男の子用を、私が着た。
 母は苦笑していたが、はしゃぐあの子の様子に、まんざらでもない様子だったのを覚えている。
 かわいらしい花のモチーフは、あの子に良く似合った。
 あんなこと、あれが最後。
 幾つの時だったろう。

 ちみさちにすみてぃ……

 眠ったあの子を置いて、私は部屋を出た。
 広い廊下。
 何処までも続きそうな闇の中、小さく何かが灯っている。
 右手にはナイフ。
 他には何も無い。何も無いことを、私は知っている。けれど、あの子は知らない。知らないままで、いい。
 だって、私たちは別の人間だから。
 私に気づいた大人が、驚いた様子で、しかし優しく咎める。
 いい子だから、部屋に戻りなさい。
 もう恐いことは無いから、大丈夫よ。
(だいじょうぶじゃない)
(だって、あのひとが)
(『あのひと』がいない)

 ――波のような喪失感。
 母のぬくもり。
 父のやさしさ。
 思い出すものは沢山あったのに、あの子の涙をぬぐうのに、私は右手を使えなかった。
 だって、あの人との繋がりを、手放せないから。

 私は、口を開く。ここが何処かは知らない。けれど、あの子は、”私と一緒に居たらいけない”。
 酷く悲しい気持ちの私は、きっと、子供には不似合いな――剣呑な雰囲気を持っていただろう。

「おとうとを、にほんにかえして」

 ――これは夢だ。

 ――泣きそうな声を発した、子供の私。それを見る私。
 舞台に立つ私。
 そこへは行けない私。

 これは夢だろう。
 手元に視線を移す。
 両手を包んだ手袋は、白だった。
 白い布は、ひざの上にも広がり、そこから続いて、椅子の形に添い、床に流れている。
 純白だ。
 万華鏡を持った手は、花嫁がするように、純白の手袋に彩られていた。

「ッ……?」
 首筋に、痛みが走る。
 左手を置くと、ぬるりと何かが滑り落ちてきた。

 あかい はな

 おとうさんと おかあさんが たおれて

 そうした ひとたちに「やめて」って 

 やめてって いったら

 ――自分に向けられた、刃を避けた。
 避けたその足で、身を翻し、逆に武器を獲った。
 後は簡単だ。
 何処へ刃を向ければ良いのか、「なんとなく」分かった。
 そうか。
 理解は突然やってきた。
 「こうすれば、人は止まる」。
 単純だった。
 簡単だった。
 簡単に、人は死んだ。

 言いようの無い苦さが、喉にへばりついて取れない。
 悲鳴が、喉元までやってきて、そこに留まった。
 誰の物ともつかない血が、白い布地に落ちていく。

 ――おかしい。
 夢である、という認識よりも、恐怖と混乱が勝った。

「……やだっ」

 立ち上がると、白い布は美しく広がった。
 赤い染みはヴァージンロードのようだ。逃げるように駆け出す。

「やだっ……」

 万華鏡を手放そうとする、その手を 握る だれかの……

「……ッ……!」

 ――ロジック様……!!

 目を開けて、暫く。
 知念京(ちねん・きょう)は自分が何処に置かれているか、把握できずに居た。
 呼吸が乱れている。周りは暗く、背中は硬く冷たい。
 視界にトランクと、閉じられた世界が写った。
(そうか、トラック……)
 トラックの、荷台。
 現在の移動手段で、居住空間。
 付随する様々な事情を思い出して、ため息をつく。ひとまず、夢から脱出できたらしいことへの安堵もあった。ふっと力を抜こうとして、あることに気づく。頭の下に、やわらかい物がある――
「どうした」
「ロ、」
 ロジック様。口にして身を起こそうとする、それを彼が制する。
「急に身を起こされるとぶつかる。そのまま寝ていろ」
 ふわ、と、耳のあたりに柔らかな素材が当たった。コートの端についた、羽毛のような素材。頭の下には、彼の膝があった。
 居たたまれなくなって、視線だけ逸らす。頭を動かしたかったが、緊張のあまり動かない。自分の体の強張りよりも、彼の膝を痛めてしまわないか、そちらの方が気になった。

「悪い夢でも見たのか」
「……わ、……分かりません」

 間が抜けた返答になる。

 頬の熱さを、明るければ彼にそれを気取られただろうかということを、薄暗さを幸運に思うほどの余裕は、京には無かった。
 万華鏡を、確かに眠る前……何処からきたのか分からないそれを、握って眠った記憶があった。そこに今、庇護者の手がある。それだけで、今見た夢のことなど、一気に飛んでしまった。
 いや。
 今こうしているのも、夢ではないのかと、京は思う。
 眠っている間、何かを口走ったのだろうか。
 こちらからも、彼の表情は良く見えない。
(恥ずかしい……)
 あの夢は。
 血に塗れた手を、悔やむ資格も無いのに。
 この道が、どんなに血塗られていても、選んだのは自分だ。あの子を置き去りにしてまで。
 そんな思いが、胸に広がる罪悪感の苦さと共に広がる。
 その苦さを、瞬時に忘れてしまう己のあさましさが、恥ずかしかった。
 蜜のように何かを溶かしていた手のぬくもりが、そっと離れる。
「……すみ、……ません」
 身を縮めたまま京は言う。
「もう、大丈夫です。俺は」
 言葉は途中で遮られた。
 ばさりと、衣擦れの音。
 肩のあたりから、何かが京を覆う。それはわずかに硬く、けれど優しく外気を遮った。
「少し休め」
 何も言わなくても良い。そう言われた様で。
「……はい」
 嬉しくて、でも切なくて。千切れそうな困惑を隠すように、上着に顔をうずめる。
 もし、これが夢でも。

 閉じた目頭が、僅かに熱い。
 頬をくすぐる前髪を、大きな手が撫でる。
 カチャリ、と、どこかでガラスの音がした。乾いて、硬い音。
 あの万華鏡だろうか。霞む思考で、辛うじて思い至ったが、あれを何処で見て、そして何処へ置いたのか、記憶は結論を結びそうに無かった。

 夢でも、構わない。
 これが、愛でなくても。

 私は、何かを手にとった。

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前回URL:http://pbmblog.sarasa.chu.jp/?eid=410050#sequel
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今回の血液記憶(お題)「芸能活動の経験」
今回万華鏡を覗いたPC名:知念 京
プラリア執筆者名:Sie
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次回指定血液記憶(お題):「『ドレーガ』に対する思慕の記憶」
次回万華鏡を手にするPL名:
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まとめサイトURL:http://www.piggymiggy.com/puraria/
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 企画に参加させていただいたときのもの。
 PL/PC共に、殆ど交流をしていない状態でしたから、これは本当に僥倖でした。響さんと、PLさん、そして主催者さんにはとっても感謝しております。
 そのまま転載しております。汗。
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