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個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 オテル・ド・ブリュメール
2007年03月16日 (金) | 編集 |
第?回リレープライベートリアクション

No.P×OXXO1      担当:Sie

「鏡の中のあなた」

(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)

■プラリアを読む

―――――――――――――――――――――――

 変えられないことが、あると思っていた。
 ――”それ”を、否定したいのでは無くて。

 冬の朝は遅い。
 夜が長い、と言ったほうが早いのだろうか。闇に住む者達にとっては、特に。
 死者が歩き回る時間が増えたところで、ホテル内で働く自分にとって、さして大きな違いは無いのだが、それでもやはり、勤務時間に変化は出る。
 目覚め、体を伸ばしてから、ああ、今日は子会社面接日だっけ、と思う。

 初めての人に会う事は、楽しい。

 初めての反応、初めての感情。色恋沙汰に関わる事でなくても、「それ」は、常葉都(ときわ・みやこ)の胸を弾ませた。
 その胸が豊かに膨らみ、柔らかなものであれば、彼の人生は多少変わっていただろうか。
 意に介さない様子で、髪を梳く。

 赤く、柔らかなそれ。

 高く結わえても、肩甲骨をするりと通り抜け、腰の辺りまで揺れる豊かなものだ。手入れが行き届き、やさしい光を放っている。
 念入りなブラッシングも、結い上げ方も、靴を脱ぎ玄関に揃える程度には自然な流れで、彼がどれほどその作業を繰り返したか、用意に想像できる動きだった。

「……切りたいなぁ」
 都が呟く。
「切ったら良いじゃない」
 誰かが答える。
 背の高い女性。くすりと微笑んで、都を見ている。その目は優しい。
「おはよう。……切らないよ、まだ」
「今日は面接なんでしょ。可愛いふりして期待させて。男性社員をがっかりさせに行くの?」
「喜ぶ人もいるかも知れないじゃない」
 都に悪びれた様子は無い。むしろ面白がっている気配が濃厚だ。
 朝の空気。 
 不思議なことに、と言うべきか、”このホテル”の一室では、特別に珍しいことではない、と言うべきか――窓には分厚いカーテンが引かれ、その奥にも何か仕掛けがあるのか、この部屋には日光が無かった。
「ま、私は好きだけどね? 女の子みたいで」
「ん。んー」
 都が小首を傾げる。
 不満と言うまでではない、曖昧な返答。
「なぁに、都さん」
 女性が、気だるげにベッドから降りる。
「ご不満?」
 都にしなだれかかる腕は、白く柔らかだ。それでいて、少しの張りがある。動物がするように、しなやかな動き。
 都は、されるがままに女性の肌を受け入れる。猫が喉を撫でられるように。
「うーん。不満……じゃないし、他人からどう見られているかは、分かってるつもりだけど」
「けど?」
「ワタシ、男だからさ」
 ぱしん、と、赤い爪が都の鼻先を弾く。
「あた」
「面倒な子ねぇ。だったらもっと男らしくしても良いんじゃない?」
 んー。
 再び都が唸る。
「……前に、双子のきょうだいが居る、って話、したっけ」
 そうね、と、頷く。小さい頃の写真は、とても可愛かった。と。
「今も可愛いでしょ。
 あのね、あの子、女の子でしょ。ワタシが男っぽくなるとさぁ……、あの子がどっかで、女っぽくなってるんじゃないかって、不安なんだよね」
 今度は女性が、小首を傾げる。
「それは、悪いことなの?」
 たずねられ、都は、長い髪を弄ぶ。
「人って、同じじゃ居られないでしょ」
 都の表情は、複雑だった。困ったような、何の感情も無いかのような。
「だから、別に……悪いことじゃ無いし……むしろ……」
 女性は、柔らかな絨毯の上に膝を折った。
「止められることじゃないと思うんだよ……」
 下から見上げる彼女の顔を、都は見下ろす形になる。
「ううん」
 都の瞳が、少し揺れる。
「初めから、そうだから」
 初めから?
 尋ねられ、都はこくりと首を縦に振る。
「初めから……」

 はじまり。

 <赤>と<黒>の始まりが、<始祖>であるなら。

 この胸の軋みを、彼らも感じていたのか。

「だから、意味は無いのかも知れないけど」
 都は目を閉じ、髪を弄んでいた手を下ろす。
 女性の手が、その上に重ねられた。
「でも、どっちかって言うと」
「どっちかって言うと?」
 思案する風の都に、女性が尋ねる。
「京と同じ顔で居ると、ワルイコト出来ないじゃない。ワルイコトしてる京見てる感じでさぁ。だから、ちょっと違う外見にしときたいんだよね……何ていうか……」真剣な顔で、都は言う。「萎えるから」
 女性が笑った。
 むしろ吹き出した。
「ワルイコト、しなきゃ良いじゃないの」
 寄り添って囁く。
「馬鹿ね」
 たしなめる言葉でありながら、それには愛しさが込められていた。
「うん。……ごめんなさい」
 お互いに、交わしたい言葉は沢山あった。触れる手に未練は無い。未練は無いのに、触れてしまう。それが言葉の代わり。名残の挨拶。
 お互いに、知っていたから。
 それぞれに、愛する存在があること。
 それが無くては、生きていけないくらいに。
「謝るくらいなら、しちゃダメよ」
 女性の背は少し高く、黒髪は都の赤と対照的に、しっとりと塗れていた。瞳も同じように黒く、瞬くと夜空の星のようだ。黒い女(ひと)。都はそう思う。限りなく、美しい<黒>。永遠に近づけない、闇。

 ――この闇を、あの子は愛したの。

「じゃ、……ありがと」 
「馬鹿」
 女性は、やはり同じように、でも寂しげに微笑んだ。

 これが最後。
 日の光が入らない部屋。

 変わらないものも、あることを知った。
 ――でも、変わっていきたい。

「もう一度会えたら」
 都の手は、女性のそれよりも、少ししっかりしている。長く、器用に、女性の手を包む。
 透き通った声で、都が言う。
「また好きになってしまうかも知れません」

 変わっていくから。待っていて。強いワタシになるから。貴女も、貴女の強さで、生きて。

 生きて。

「そういう馬鹿なところ、好きよ」

 閉じられた部屋に、光が入った。微笑みの形で。
 まるで、愛のように。
―――――――――――――――――――――――

***
 つい。
 相手の女性は、ホテル在住の<黒>さん、というイメージです。特に誰と言う想定はしていません。別れの朝。出会いの朝。
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