個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「罪をなすりつける」
2007年05月12日 (土) | 編集 |
No.P×OXX53 担当:Sie
「(何もかもあんたのせいだ)」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
■プラリアを読む


――――――――
 何もかも何もかも何もかも。

 歯軋りしながらあまねは思う。
(――あんたのせいだ)
 暗い嗤い。
 よろめきながらあまねは歩く。

 何もかも、苦痛だった。
 頭の中に残る、幾つもの過去、幾つもの後悔。愛情と喜びは、言葉に出来ない苦しみにかき消されてしまう。
 左手を口元まで持ち上げると、あまねは手首に思い切り歯を立てた。死んでしまえ、と、誰よりも強く自分に思う。泣きたかった。声を上げて泣き叫びたかった。
 身体のあちこちが痛む。
 痛みが何に起因して、どこが痛むのか、あまねにはもうわからない。
 背中の向こうで、ばちん、と、何かがはぜる音がした。
 ――夜の公園。
 折れたのは桜の木だろうか。
 目に見えているのだから分かっていてしかるべきだ。力を使って折ったのだ。第三の腕で手折ったのだ。視線を逸らすと、枝葉は力なく落ちた。

(……あんたのせいだ)

 あまね自身も、力なく崩れ落ちる。
 しゃがみこむと、腹の奥底が痛む。胃の腑が焼けるようだった。
 第三の腕。
 気を抜けば、手を伸ばすようにそれを伸ばしてしまう。
 意識して抑えていたのだ。運命を使う、ということを。
 それが、ふとした拍子に忘れてしまった。あの男の前で。馬鹿だった、と、思う。あれは確か、自分の父親だったはずなのに。その考えに至ったのは何度目だっただろう。もう数えることすら億劫になった。
 恐らく、自分に父親なんてものはないのだ。
 母親もない。おかしいな、と、思う。
 本当におかしい。

 それなら何故、自分はここに居るのだろう。

 穂積という姓を冠して、こんなかたちをして。男に嬲られねばならない。犯されなくてはならない。
 ――ああ。
 理解した、と、あまねは嗤う。

 延べた左手には、三日月の紋章。

 ゆっくりと、それを口元に運んで。舌先で舐めた。いとおしげに口付けて――思い切り、噛み切った。びりとした衝撃と、痛みが走る。ほんの僅か切っただけでも痛むのだ。歯を立てて痛まない道理などなかった。鈍い刃は、むしろ傷口を深くする。
 唇を離すと、そこからつうと血が伝い――
 三日月はそのまま、傷ひとつ負わずにそこにあった。
 あまねの歯は紋章をかすりもしていない。それがおかしくて、あまねはくつくつと嗤った。

(あんたのせいだ)

 脳裏に浮かぶのは、始まりの女。
 それは間違いない。「自分」なのに。

(何もかもあんたのせいだ)

 ぎりと奥歯を噛み締める。
 彼女の記憶を持たなければ。始まりの記憶がなければ、その後に続く地獄のような苦しみだって存在しえなかったかもしれない。彼女が人を愛さなければ。彼女が彼と出会わなければ。
 ああ、しかし、その「彼女」とは、「自分」のことではなかったか。

 ――罵りながら、拒みながら。

 彼女は人を愛することで、恐らく救われたのではないか、と、妄想する。愛する人が居ること。その人の為に生きること。
 それはあまねにとって想像に過ぎなかったけれど、かけがえの無い幸福のようにも思えた。愛を得た後、命を落としたとしても、だ。

 そのまま、崩れ落ちるように芝生に倒れこむ。

 見上げると星が――その向こうに月が見えた。
 彼女を示す三日月が。
 遠く輝くそれと、自分との距離は、正しく今、月と人ほどに離れているように思われた。つう、と、涙が伝う。
 何をどう間違えて、ここまで来てしまったのだろう。

 魂と身体の中に、どうしようもないひずみがあるようで苦しい。

(何もかも)
 涙は零れた。
 喉の奥が、ひりと痛む。
(あんたのせいだ)

 ――悲しかった。
 悪いのは自分だ。彼女を貶めつつあるのは自分だ。
 こんな……こんな醜いものと、彼女を繋げてしまった。他の痛みは感じない。ただ。全ては――自分の性だという罪悪感だけが、胸に滲んで落ちない。

 ウルリーカ。
 その名を知ったのは、それから数年後のこと。

(何もかも)

 ――ぼくのせいだ――

 身体に浮かぶ紋章は、欠けて行く三日月。
――――――――

■咎人五題(下記サイトから借用)
 site name :: リライト
 master :: 甘利はるき様
 url :: http://lonelylion.nobody.jp/

■PLより:
 八十神へ来る前、まだ虐待を受けていた頃のあまね。
 の、イメージです。
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