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個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「堕ちて行く」
2007年05月12日 (土) | 編集 |
No.P×OXX50 担当:Sie
「ゆるやかに落下する」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
■プラリアを読む

――――――――
 夜が明けた。

 何をしていても時間は過ぎ去ってゆくのだと、10万年の繰り返しから学ばなかったのだろうか。学んだはずの繰り返しから、何を得て、何を失ったのだろう。
 穂積あまね(ほづみ・―)が目覚めたそこは、彼の部屋でもベッドでもなかった。
 宵闇館――正式名称ではなく建物の名で呼ばれるそこは、特設校であり、男娼館でもある。そこが「隔離」されていたのは、今に始まったことじゃない。秘密の場所。
 しかし今、そこは本当に「切り取られ」てしまった。
 結界。
 言われてもピンと来ない。
 当たり前だ。
 生まれてこの方……少なくとも、穂積あまねと名づけられてから22年ほどの間で、結界に閉じ込められたという経験は無い。
 出ることは容易い。
 しかし、あまねの心は見えない鎖で縛られていた。
 出られない、のではない。出ない、のだ。

「……参ったな」

 呟いたものの、言葉に悲壮は無かった。
 むしろ、誰かの為にここに居る、という思いは、あまねを暖かくする。
『ここに居てくれる?』
 何度も。
 胸の内で繰り返した、夢崎邦夫[ゆめさき・くにお]の言葉。
『ああ』
 そう、答えた。
 考えてみれば、邦夫があまねに何かを頼んだのはあれが2度目だ。1度目は、名前を訊かれた。

 噛み締めて。
 初めてであったときの邦夫を思い出す。
 始めて見た邦夫は、完璧すぎるほどに男娼で。それが男に抱かれるためにしつらえた身体であることも、自分が彼を抱いた数多くの男の、その一人であることも、さほど気にはならなかった。
 もう一度、会いたいと。
 そう思うことは――あの妖花に堕ちたかのようで、癪に障った。だから僅かに、僅かにだけ歯向かった。
 指名をせずに、館を訪れて。
 接客係が、邦夫に通せば――
 ああ。
 自分はどうするつもりだったのだろう。
 もしあの時会えなければ、大人しく諦めるつもり、ではなかったのだ。会えるまで通うつもりだった。なら、初めから指名したところで瑣末な問題だ。素直に会いたいと言えば良い。
 それが出来なかった。滑稽な話だ。

 ……おちるようだ、と、あまねは思う。

 水が、高いところから低いところへ流れるように、自分の心は、どんどんと彼に落ちていった。

(似ている、のかな)

 鏡あわせのようだと、思った。
 自分の姿を確かめるには鏡が要る。

(ぼくがぼくになるには、あの子が要る)

 そう、思った。似ていたのだろうか。

 ベッドのシーツを撫でると、しゃりとした感触が帰る。
 きちんと整頓された部屋。男子高校生の部屋としては、少々出来すぎなくらいだと、あまねは思う。思うが、邦夫の部屋としては――非常に彼らしい、とも感じた。
 几帳面に美しく整えるのが常である少年が、名も知らぬ男の前で乱れてみせるまでに。一体、どれだけのものを、落としてきたのだろうか。
 身体を起こし、前髪を後ろに流す。
 伸びたそれはあまねの視界を邪魔したが、それ以上に、そこにあるべきパーツ……眼鏡がないのだ。眠りなれない場所は、こういうところが不便だ、と、あまねはひとりごちる。

 独りきり待つ、愛人の部屋。

 愛人だとか恋人だとか、そんな称号には興味がない。
 ここで自分は、おそらく、彼の……「夢崎のお気に入り」という認識なのだろう。密月が、雨宮のそれであるように。
 思って、あまねは嗤う。滑稽だ。
 枕元に置いた眼鏡を探し当て、ベッドから抜け出す。
 手のひらを、まだ上って間もない太陽に晒す。それは、邦夫のそれとは比べ物にならないほど大きかった。邦夫の、小さなそれを思い出す。

(ああ……そうか)

 不意に、あまねは思う。
 決して強い力ではなかった。けれど離れがたい何か。
 邦夫という雫は、ぽつぽつと緩やかに、自分の胸に落ちて来ていた。自分はそれを拒まなかった。
 気が付けばそこには。
 帰れないほど大きな穴が開いている。
 今まで、空白すらも無かった自分の胸に。

 堕ちて行く――落ちていく――おちていく。

 恋に。
 堕ちるとは、こういうことか。

 ――ゆるやかに――落下する。

 その先に、何が? そんな事は知らない。
 体全部で愛するだけだ。

 誰の目にも触れぬ場所で、あまねはゆっくりと微笑んだ。
 愛する人を思って、この上なく、優しく。
――――――――

■咎人五題(下記サイトから借用)
 site name :: リライト
 master :: 甘利はるき様
 url :: http://lonelylion.nobody.jp/

■PLより:
 恋に落ちるって話ですね。
 底なしにはまってゆくといいと思います(待て)。
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