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個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「きょうだい」
2007年05月12日 (土) | 編集 |
No.P×OXX51 担当:Sie
「報いを受ける覚悟は出来ている」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
■プラリアを読む


――――――――
 扉の向こうから、小さな寝息が聞こえてくる。

***
 覚悟なんか、出来ていなかったのかもしれない。

 窓の外はとっくに暗い。闇の中だ。
 ぶうん……と、律儀に働く冷蔵庫の音。
 学生二人が住むには少し広い住居は、彼らの――腕密月(かいな・みつづき)と、穂積あまね(ほづみ・―)の祖母が用意したものだ。
 戸籍上にあまねと祖母の関係は明記されていないし、祖母が案じたのは密月の身上だけだったのだけれど、彼らの血は繋がっていた。母親と言う名の女性を介して。

 密月が目を覚ましたのはベッドの中で、当然ながら独りきり、だった。まだ新しい建物、の、匂い。
 寝ぼけた瞼を何度かこすり、密月はぼやりとあたりを見渡す。
 八十神へ来て、数ヶ月。
 季節がそろそろ変わろうとしていた。
 だから、肌を刺す空気は少し冷たい。転校生を見送ったことはあっても、転校するのはこれが初めてのこと。家族から離れて暮らすのも、これが始めてだった。――密月にとっては。
 実家を離れてみてようやく、密月は色々なことに気づいた。
 母が義父が妹が、自分を愛してくれていたこと。
 祖母の溺愛が、異常な程深かったこと――学生二人東京に送るのに、新築のマンションを一部屋用意した勢いはおそらく、尋常ではないとさすがの密月も気づいている。
 そして。
 彼の兄と暮らすのも――宿泊ではなく、居候でもなく、同じ屋根の下に暮らすのは――これが初めてだ、という事も。

「……ん」

 部屋を見渡す。
 まだ見慣れない、けれど馴染んできた部屋。
 物の数は酷く少ない。飾り気と言ったら、棚の上にあるコップがひとつ。そこに生けられた花だけだ。
 暗く、寂しい空間が、お前は独りだと告げている。
 覚悟、したつもりでいた。頼るものなく生きていく覚悟。そんなもの、何時何処で誰が出来ていたというのか。寂しい。

「……あー……ちゃん……?」

 ぶうん……
 冷蔵庫だけが律儀に動いている。と、廊下から光が漏れていることに気づいて身体を起こす。……起きて、いるのだろうか。まだ。もう?
 布団から足を滑らせ、密月は起き上がった。

***
 光は、リビングから漏れていた。
 何も無い、本当に何も無いリビングには、キッチンに繋がるカウンターと、椅子がふたつ。
 その下に座布団を引いて、壁にもたれながら、あまねは本を広げていた。
「目ぇ、悪ぅなるえ」
「……平気」
 ずるずると布団ごと移動してきた密月へ視線を送って、あまねはひとつため息をつく。
「カタツムリ」
「ちゃうもん」
「じゃあ、でんでん虫」
「おんなしやん」
 唇を尖らせ、それでも密月はあまねの横に座った。フローリングにはカーペットひとつ敷いていない。それはひやり、と、密月を拒んだ。
「寒ぅ無い?」
「無い」
「眠ぅ無い?」
「ああ」
「……そう」
 密月が傍らで丸くなり、とろとろと質問するのを、あまねはさせるままにしていた。声が段々鈍くなってきても、変わりなく答え、そうして、一言。
「眠いんだろう」
「……眠ぅあらへん」
 かくん、と、船を漕ぐ密月に告げて、薄く笑う。
「馬鹿だね」
「ばかじゃないもん」
「馬鹿」
 こつん、と、手にした文庫で密月の頭を叩いて。
 その本で、ぽんぽん、と、座布団の端を示す。
「頭、こっち」
「ん」
 言われるままに――歯向かいもせず、密月は頭を預けてきた。ほんの僅か、あまねに触れる位置で、すぐさま瞼を閉じる。
 すう、と、寝息が聞こえて来るまで、数分も掛からなかった。子供がそうするように、無防備で深い眠り。中学に上がっても、密月は子供のようだった。
 大人びて、悟ったかのように大人しいのに、あまねの前ではひどく子供じみて、その不安定さを、あまねは案じていた。深い深い寝息を聞きながら――ふと目を閉じる。
「……ガキ」

 密月が識らない前世を、あまね独りが覚えている。

 かつての――前世の密月を愛した記憶。
 略奪愛の想い出、と、『それ』が呼ばれている事は、八十神へ来て始めて知った。同じ思い出を持つ人間が数多く居ることも。しかし、それが何だというのだろう。罪は罪だ。
 次生まれ変わったら。
 そんな事を考えないでもなかった。
 惹かれてはいけない、と、思えば思うほど惹かれたあの過去を、何度自分ひとりの妄想ならと思っただろう。生まれ変わった今、彼女は――かつてのあまねが愛した『彼女』は、10万年前からそうだったかのように――ごくごく自然に、あまねの側に居た。父親の違う、弟。
 兄弟として愛するにも、前世の続きとして愛するにも、ひどく中途半端なそれ。
 性別なんて、と、今だって思う。
 しかし、『彼女』が『彼女』でないことに、ひどく絶望したのも確かだ。もう還れない。当たり前だ。あれは現世じゃあない。幻でもない。過ぎ去った過去だ。
 彼女は彼で――彼女は密月で――密月は彼女だ。けれど。

「ん……」
 寝返りをうつ密月の、頬に手を添えた。
 優しく撫でると、ゆるく甘えてくる。知らぬ間に、ほんの数十年――数百年だろうか。会わぬ間に、これは他の男に躾けられたらしい、ということに、あまねはとっくに気づいていた。
 指の腹で唇をなぞる。
 幼い身体。
 淡い色の眉が、むずがる子供のように寄せられたのを見て、あまねは指を離した。

(どこの誰だか知らないが――よくもまあ、ここまで躾けてくれたもんだよ)

 口調もそうだろう。
 恐らく廓で教え込まれたものだ。
 囁きも、恐らく、そのときか――もっと前からあったものか、兎に角、密月には、誰のものとも知れぬ手垢がついていた。そんな事はどうでも良い。
 どうでも良いのに、腹立たしい。

 自分の女に――弟に――腕密月に。
 そのどれも正しく、間違った嫉妬だった。それを十二分に理解したうえで、あまねは嫉妬に身を焦がす。
 この魂に手を出した何かに。
 この魂が、今も。愛する力を持っていることに。
 同じ血を持ちながら、何故こうも違うのだと。おかしい。間違っている。頭がおかしい……

(……誰か)

 あまねはばさりと、本を落とす。
 活字の列。それは、今のあまねに何の意味ももたらさなかった。

(妄想だと言ってくれ……)

 報いを受ける覚悟は出来ている。
 彼女の手を取ったとき、かつてそう思ったはずなのに。
 これが報いだとしたら――それは。
 それは一体如何なる悪魔の呪いなのか。

 小さな寝息が聞こえてくる。

 あまねはゆるく、罪に身を浸した。
――――――――

■咎人五題(下記サイトから借用)
 site name :: リライト
 master :: 甘利はるき様
 url :: http://lonelylion.nobody.jp/

※洋室(2)の方が密の部屋って事で

■PLより:
 かなりどうでも良い話なのですが、密月が「早くから運命を自覚していた」という(今のところ自称)設定で、つまり早くから囁き被害をこうむっていたのならば、……あまねが知らないわけが無いよね……?
 と いう 考えに 行き着いて久しかったりします。

 抱きしめて押さえ込むとか、行動を制限させてやり過ごさせるのが一番害の無い解決方法かなと思うのですが(あまねは密には欲情せぬようなので ←あっ 今なんかゆった!)、ええと。
 すみません(何故か謝る)。

 あと、密の和装はばーちゃんの貢物って裏設定です
 パトロンですね!(パトロン言うな)
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