個人的妄想倉庫×運命準備委員会
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 「浸水」雨宮先生×密月
2007年03月02日 (金) | 編集 |
第1回プライベートリアクション
No.P×OXXO8 担当:Sie
「浸水のように」
(このプライベートリアクションは、以下の行動選択肢を選ばれた方の全てに送られています)
 注意キーワード:【BL】【18禁?】

■プラリアを読む

――――――――
 なぜ、雨の日を選んでしまったのだろう。
 館に来ることを決めるまでに、確かに時間はかかった。
 雨音を聞いて、日が陰って行くのを見て。
 傘を広げれば、闇に乗じられると思ったのも、確かだ。

 ゆるやかに、強く、弱く降る雨。

 窓の外、カーテンを開ければ、雨足の強さを確認することが出来ただろうか。そこを開ける勇気を、少年、腕密月(かいな・みつづき)は持たなかった。
 宵闇館。
 ベッドを中心に、少しだけの調度品。
 それが広いのか狭いのか、密月には判断できるほどの知識はなかった。前世の記憶をたどれば、或いは分かったかも知れない。けれども、学生服の襟元を、くっと指で緩めながら、二度三度、所在なげにベッドの上を移動する、彼は正真正銘に。
 ただの18歳で。

「珍しいな。高校生が私をオーダーするとは」

 雨宮譲[あまみや・ゆずる]。
 訪れた人物は、スーツの上に白衣をまとい、眼鏡の下に怜悧な『教師の顔』をしていて。
 例えば彼に、何かを教わるとしたら、それはとても心強いことであろうし、同時に、自分の愚かさを晒す、そんな両面を味わうことになりそうな、そんな。賢そうな顔で。

「雨宮……先生、ですか?」
 問う自分が、彼にとって愚者でないことを祈りながら、短い会話を交わす。
「ああ。私は『リバ』だから、どちらにも対応できる。……だが君はそんな目的で来たようではなさそうだ」
「分かりますか」

 密月は俯いた。
 俯いて、かつては心理学者だったと言う、雨宮を見上げる。
 彼の運命。こうして、人の心理に触れ、それを探り、あるいは癒すことを、彼は何度繰り返したのだろう。自分が、人を愛し、殺され、また自ら毒を呷るような生き方を繰り返すうちに。

 思いながら、二度三度逡巡して。
 迷いながらも、密月は口を開く。

「この宵闇館で行われているのは、何なんですのん?」

 宵闇館は、男にしか分からない悩みを、『潰す』ところだと聞いた。
 それが、自分の得手とする、“あの”生き方ならば、自分は役に立つかも知れない。が。

「ここで求められるんは銭とちゃいますやろ。むしろ、金目当ても、愛せん者を愛するのもアカン。分け合う快楽って、何ですのん?」

 声はだんだん、弱く強くなっていった。
 感情が滲む。愛とは何か。
 問われて答えられるほどの知識を、密月はもたない。

「……愛って、何ですのん……? うち、それが知りたい」

 吐き出すように、言った。言い終えて初めて、上手く敬語が使えなかったことに気づいて恥じる。酷く訛って聞こえただろう。
 そうだな、という、雨宮の声は、酷く近くに響いた。
 体温すら感じられそうな、隣から。

 口を開きかけて、しかし彼の話に耳を傾ける。
 薄く開いた唇を、軽く舐めた。居住まいを直し、彼に向き直る。
 一人で処理することと、二人で愛し合うことはまったくの別物だと、雨宮は言った。

(柔らかく、包み込むこと)

 禁断とされている同性愛では、特に。
 雨宮の言葉を口の中で転がす。甘いもののように。

「何か贈物をせえへんと、お相手してくれはりませんの?」
 浮かんだ問いを投げかける。
「まさか」
 言い添えて、気に入った相手にそうする客も居る、という雨宮の話を――ひとつの愛の形を聞いて。その声が、耳朶に響くのを、心地よいと感じて。

「じゃあ……抱いてくれはりますのん……?」
「もちろんだ」

 見上げていた。いや、見つめていた。
 こぼれた言葉を、恥じ入る暇など無かった。
 ふっと、雨宮の唇が微笑みの形を作ったのだと理解する前に、密月は唇を奪われていた。だから始めに理解したのは、その熱だ。
 啄ばまれて、碧の眼を閉じる。
 差し込まれた舌に、ぞくりと、背筋に走る何かを感じるのと同時に、自分のそれを絡める。
 密月の紋章は、そこにあった。
 絡み合う口腔にあって、それは密月にも見えない。雨宮にも。
 けれどそこに、自分とは違う熱があって、それが自分の、魂すら燃やすようで。

「どちらかというと『リバ』の『受』側だな。なら私が『攻』よう」

 雨宮の声が、近くで。
 どこか遠くで。
 熱を帯び始めた密月の耳に響く。

「せ、せんせぇ」

 首筋を撫でられ、ぞくりと振るえて。
 こぼれた声は、不安げだったのだろうか。

「大丈夫だろう? 怖いのなら目を閉じていればいい。愛の形を教えてやる」

 怖くは、ない。
 怖いものがあるとしたら、湧き上がる快楽以外に何があるというのか。
 ああ、それは、それは確かに――恐怖かもしれない。

 思いながら、しかし。
 それを受け容れることしか。
 釦をはずしていく、雨宮の指が。
 ガラスを隔てて向こう側、眼鏡の下にある雨宮の目が、触れれば切れそうで、抱けば解けそうで――ひどく、ひどく触れたくて。そんなことしか考えられなくて。
 体が重なることは、酷く心地よかった。
 心地よいと考える隙間すら、ない。
 これが愛の、ひとつの形だという雨宮の言葉は、確かな実感をもって、密月に響く。

 それは。

 水に溶ける角砂糖のように。
 簡単に砕けた理性で。

 ――貫かれながら、抱かれながら。

 まるで、抱きしめているようだと密月は思う。
 抱きしめあう、かたち。

 それは、自分を犯す雨宮の形であり、彼を受け容れる自分の形であり、宵闇館(ここ)で繰り返される、さまざまなことが。
 ひとつの、形に――

 形に、過ぎなくて。
 その意味は、問われれば消えてしまうような。
 その意味は。
 探し当てたものにしか、たぶん、分からない。

 ――なぜ。

 なぜ、雨の日を選んでしまったのだろう。
 いつでも来るといい、という雨宮の言葉を。大切なもののように、ポケットにしまって。傘を差して、空を見上げ。密月は思う。

 これから、雨が降るたびに。
 自分は、このことを思い出すのか、と。

 ――そんな、雨の日。

――――――――

□PLより:
 第2回目アクションに間に合わせたくて、慌てて書きました。
 返歌というか、脳内保管というか、密月側からの、が、描きたかった……のですけれども、むーん、蛇足っぽいですね。大事なことはちゃんとリアに書いてあるし。あわわ。
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